Share

第10話 愛人です

Author: 月歌
last update Last Updated: 2025-07-11 09:35:33

(速水誠 視点)

やってしまった……

清二の寝室のベッドで、僕は一人目覚めた。その横に清二の姿はない。身は奇麗に清められ着物が着せされていた。まあ、清二自身が身を整えてくれた訳ではないだろうが……。

でも、これは大きな失態だ。きっと、清二は僕に性奴隷としての技巧を期待していたに違いない。だからこそ、男に興味のない彼が、僕を抱いてくれたのだ。

なのに……僕は清二とのセックスを全うする事なく気絶してしまった。

死んだ清一は、セックス後に気絶した僕を弄ぶことも楽しみの一つにしていた。でも、清二がそんな変態だとは思えない。まるで、僕の事を処女でも扱うように丁寧に抱いてくれた。それにもかかわらず気絶するなんて……性奴隷として失格だ。

ーーいや、僕は清二の性奴隷の座ではなく、彼の愛人の座を狙っている。

でも、愛人なら情事の後には自らの体を清め、旦那様に衣装を用意したり、心安らげる会話を提供したりするものではないのか?

「全部できてないーーーー!」

僕は思わず嘆きの叫びをあげてしまった。性奴隷としての技も披露できず、さらにーー次期組長の腕をナイフで斬りつけてしまった。これって、大阪湾に沈められる案件じゃないの?まずい、まずい状態だ。……どうしよう。逃げ出そうか?逃げ出せるかな……。

「ようやく目が覚めたか、速水?」

「ひぃい!」

突然、寝室の扉が開き着物姿の清二が姿を現した。僕は清二の姿を見て悲鳴を上げてしまう。そんな僕を清二は妙な顔で見つめてきた。そして、口を開く。

「なんだ、その反応は?」

「せ、清二さん……」

「だから、なんだ?」

「ご、ごめんなさい!」

「はぁ?」

「性奴隷でありながら、セックスを全うできず先に気絶してしまいました。ごめんなさい。でも、次は頑張ります!だから、清二さんの愛人の一人に加えてください。時々、清二さんが抱いてくれるだけで、僕には大きな武器になります。だから、どうか僕を見捨てないで!僕に武器を与えてください!」

清二は困惑した表情を浮かべると、僕を見つめながら口を開いた。

「あ~、悪かったな、速水。俺は男の抱き方を知らん。だから、むちゃをしておまえを気絶させてしまった。それに、おまえをぶん殴った。頬が腫れあがってる。痛いだろ……大丈夫か?」

「いえ、全然平気です。それより、今後の事を話し合いたいのですが……よろしいですか?」

「体が平気ならこっち
Continue to read this book for free
Scan code to download App
Locked Chapter

Latest chapter

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第47話 署長と竜二

    (速水 視点)まずい、まずい、まずい――。竜二が、ものすごく凶悪な顔をしている。もう“やくざ”どころじゃない……殺人鬼の顔だ。ま、まさか拳銃なんて持ってないよな?ここで警察と揉めて体検査されて、もし拳銃が出てきたら――竜二が銃刀法違反で捕まるなんて洒落にならない。ついこの前も「ムカデ男」の件で竜二を巻き込んだことを清二さんに怒られたばかりなのに……。ああ、本当にいつか清二さんに殺されるかもしれない。もしも目の前で「死ね」と命じられたら……泣くかもしれない。そんなことを考えた瞬間、涙がにじんでいた。「どうしました、速水さん?泣くことなどありません。もう襲われることはない。私があなたを守ります……大丈夫ですよ、速水さん。怖くない」「……署長さん。僕は怖くて泣いているわけじゃありません。子供じゃないんですから」「ですが、泣いている」「泣いているのは……自分の行為を恥じているからです。助けを求めた少年に、何も考えずレジカウンターの下に隠れるよう指示してしまった。そのせいで秋山はけがをしました。もし、彼が店を辞めることになったら……僕は耐えられない。だって……僕は秋山のことが大好きだから……」その言葉に、その場の全員が固まった。……いや、秋山。おまえまで固まるなよ。僕に「好き」と言われるのは、そんなに嫌か?まあ、そうだろう。だって彼女ができたらしいもんな。くそ……秋山。同じ“尻掘られ組”なのに、なぜ彼女ができる?そのコツを教えてくれ。

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第46話 後藤一成署長

    (竜二 視点)――まただ。“ムカデ男”の時と同じように、俺は躊躇して速水を危険に晒している。唇を強く噛みしめ、俺は花屋“かさぶらんか”へと全力で駆け出していた。刑事どもの動きは思った以上に鈍い。……指揮官不在ってとこか。俺はその脇をすり抜けるようにして、花屋“かさぶらんか”の店内に踏み込んだ。視線を素早く隅々へ走らせる。床には、茶髪のガキが倒れ込んでいる。そのガキを刑事二人が押さえ込み、手には剪定ばさみと万札が握られていた。レジカウンターの傍には秋山。手の甲から血を流しているが、傷は浅いようだ。そして――速水。壁に押し付けられるようにして、男に抱きしめられていた。その男は速水を胸に抱いたまま、床に転がるガキと刑事たちを“見守っている”ように見えた。だが違う。視線の奥にある関心は、ガキでも刑事でもない。あくまで――その腕に抱き込んだ速水ただ一人だと、俺は本能で理解した。速水の肩には男の右腕が絡みつき、震える腰には左腕が回されている。……こいつを俺は知っている。街をふらつき、独り歩きする変人署長。ノルマ以上に風俗店へガサ入れを仕掛け、未成年を扱う店を徹底的に潰そうとする男。――後藤一成警視。この街を管轄する西成東警察署の署長だ。だがな。おまえに速水を守る資格はねぇ。速水はひどく震えている。後藤署長に抱きしめられることに、恐怖を感じているんだ。

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第45話 竜二に癒しの花を

    (竜二 視点)俺は、夕方から突然始まったガサ入れへの対応に追われていた。調べの結果、青山組が管理する風俗店が対象ではないことは分かったが、事態が落ち着くまでは事務所で待機するよう命じられていた。「竜二さん。やっぱり今回のガサ入れは、未成年のガキを扱ってる店でしたね。青山組とは関係のない、しょぼい組織が運営してましたけど……売上はなかなか良かったようですよ。未成年の男女を舞台に裸で立たせて、そのあと客が指名して生セックス、って形式の店みたいです」俺の生まれ育ったこの街は、西成東警察署の管轄にある。前署長の頃は、警察上層部からガサ入れのノルマが示されると、その情報が青山組に流されていた。青山組もまた、管轄署がノルマを達成できるように、都合のいい店を差し出して“協力”してきた。――つまりは、持ちつ持たれつの関係だったわけだ。だが、新しく後藤一成警視が署長に就任してからは、状況が一変した。ガサ入れ情報がまったく入らなくなり、事前の連絡すらない。蜜月の関係は唐突に断ち切られ、この街全体がぎくしゃくしはじめている――そんな不穏な空気を、肌で感じていた。「やっぱ、ガキを扱うと売り上げが跳ねるよな」俺がぼやくように呟くと、部下が渋い顔をしてこちらを見てきた。「竜二さん、今はマジで時期が悪いですよ。新しい署長が就任してから、警察はノルマ以上に風俗店のガサ入れしてるじゃないですか。特にガキを扱ってるところは集中砲火ですよ。……だから、手は出さないでくださいよ?」「本気で言ってるわけじゃねえ。叔父にも止められてるしな。……でも、管理してる店の店長が内緒でガキを扱うケースだってあるだろ? それをチェックするのがめんどくせぇんだよ」

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第44話 警察署長

    (速水 視点)警察には、僕も青山組関係者の一人として名前が上がっている。清二さんが前にそう言っていたけど……本当なのだろうか。外扉は開いていたが、誰一人中に入ろうとしない。僕は思い切って扉の外へ出て、にっこり笑った。いつの間にか、五人の男が店先に集まっている。「花屋『かさぶらんか』へようこそ。オーナーの速水誠です。ご来店ありがとうございます。どのようなお花をご希望でしょうか?」「……速水誠さん?」「はい、そうです」僕の名を確認した男は表情を引き締め、真面目な声でゆっくりと口を開いた。「速水さん、営業中に申し訳ありません。私は西成東警察署の刑事・小林と申します。実は近くで風俗店のガサ入れをしておりまして……もちろん、“ガサ入れ”の意味はご存じですよね? その店で働いていた少年が逃げ出したんです。現在捜索中でして、店内に入り確認させていただきたいのですが……ご協力いただけますか?」――所轄がガサ入れを行う時は、いつも竜二から事前に警告があるはずなのに。今回に限って、何の情報もなかった。突然のガサ入れなのだろうか? ……うーん。さて、どうする……。この店自体がターゲットじゃないのは確かだが――。「うーん、“ガサ入れ”って言葉は刑事ドラマで聞いたことがあるので理解できます。確かに、店舗内に茶髪の少年が突然やってきて、『やくざに追われてる』と言うので、僕がレジカウンターの下に隠れるよう指示しました。&hell

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第43話 忍び込んだ少年

    (速水 視点)三原は“かさぶらんか”の店先で花に水をやりながら、突然僕に話しかけてきた。「なぁ速水。俺、思ったんだけどさ……そろそろ新規顧客の開拓してみねー?」「……三原、突然だな」「だってさぁ、今の“かさぶらんか”の顧客って青山組関係ばっかだろ? もしおまえが青山組と縁を切られたら、一気に客を失うことになるぜ?」「……確かに」返事に窮して、僕は言葉を濁した。三原の母親は清一の愛人だった。だが僕に剃刀入りの花束を送りつけたことで清一の怒りを買い、援助をすべて打ち切られた。そのうえ人身売買の斡旋業者にも見限られ、店の経営は一気に傾いた。そして母は借金だけを息子に残して世を去った。「まあ、そうだよね。青山組との縁が切れた時点で店の維持は難しい。……その時は、僕も三原も秋山も、三人そろって終わりかも」「……まじか」「だったら三人で夜逃げしようか?」「俺は速水と一緒に逃げてもいいけど……秋山は無理だろ。最近、彼女ができたらしいからな」「まじかっ!!」僕は思わず目を見開いて三原を凝視した。その視線に耐えきれなかったのか、三原はジョウロを置いてこちらに歩いてきた。「考えてみろよ。あいつの容姿と体格、女が放っとくわけないだろ?」「そんなぁ……秋山と僕は同じ&l

  • 君が抉った心の傷に、まだ宿る名はない〜性奴隷は泣かない〜   第42話 第三の男

    (清二 視点)速水の目から涙がぼとぼとと溢れる。その体は薄紅に染まり、甘い吐息を俺の首元で吐きだした。それだけで、俺はぞくぞくしてイキそうになる。「厄介だ……。お前は、全く厄介な奴だ。このままでは、兄弟で血みどろの争いになりかねん……くッ」「んんッ、はァ……もういって、清二さん。精液……頂戴」「はは、都合が悪くなれば"性奴隷"のふりか?」俺は再び速水をうつ伏せにしてその耳元で囁いた。「俺は、何時までお前を守れるか……わからん。組長の座を奪われたら……お前も奪われる」「清二さん……きて……ッ!」腰を一突きするだけで、速水はシーツに埋もれた。乱れた速水の髪が色っぽくて、俺のペニスが限界に達する。俺は一気に速水の最奥を貫いて精液を吐き出していた。とろとろと流れ出す白濁が速水を卑猥に穢す。「はぁ……はぁ……はぁ」「なか……いっぱい……。んんァ……」速水には秘密だがーー女の尻に突っ込むことに成功した後、確認のため男を抱いた。男の前でも勃起することに満足した。だが、実際に男を抱いてみると、速水とはまるで違っていた。緩いアナルに嵌められ喜ぶ男や、男を咥え泣いてよがってみせる男もいた。だが、どの男を抱いても――速水を抱いた時に覚える、あのぞくりとした“恐怖にも似た興奮”を味わう

More Chapters
Explore and read good novels for free
Free access to a vast number of good novels on GoodNovel app. Download the books you like and read anywhere & anytime.
Read books for free on the app
SCAN CODE TO READ ON APP
DMCA.com Protection Status